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コラム
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10月 30, 2023

地方議員の政務活動費: 透明性、責任、そして広報活動への新しい視点

 

 政務活動費の支出に当たっては、地方自治法100条14項に基づく議員の調査研究その他の活動に資するために条例で規定した使途基準に基づき支出する必要がある。

 ところが、政務活動費は政活費といわれるように、議員の生活費と混同されるような飲食や遊興費等への住民からの批判を受けるような支出が従前よりなされることがあった。政務活動費の原資が住民の税金であることから考えても、極めて不適切と言わざるを得ない支出であり、判例においても違法な支出として支出した議員又は会派に対して返還命令がなされたところである。

 

政務活動費の透明性: 京丹後市議会の完全後払い方式を考察

 このような状況の中において政務活動費の適切な支出を担保する方法として、京丹後市議会等におけるような完全後払い方式がある。

 この手法は会派又は無会派議員に対し、申請した当該年度における交付上限額を決定する手続きとなっており、実績報告は、年度内に上半期、下半期の2回に分けて行うことができ、実施状況や成果、支出額や使途についての報告に、領収書等の証拠書類を添付させている。提出書類の審査は議長(実績報告が議長の場合は副議長)が行い、市長へ送付することとされている。

 このように、実績の報告がなされ、審査を経て認められた経費がはじめて会派及び無会派議員に交付される、完全後払い制が採用されていることにより、政務活動費の支出の透明性を担保している。

 

政務活動費の透明性と議員の支出責任: 対立する判例と地方自治法の考察

 確かに議会事務局という政務活動費の当事者でない第三者による支出へのチェックが入ることは透明性の観点から評価に値する方式であるといえる。しかし、政務活動費の支出の責任は住民代表であり政治家である議員が負うべきものであり、万が一、議会事務局が支出にあたってチェックをし、その支出が適当とされたものに対し、住民監査、住民訴訟がなされ、裁判所により返還命令が出た場合、いったい誰が責任を負うのかという問題が生じる。

 また違法な支出を限りなく減らすという視点でいえば、政務活動費の支出における判例で対立するような判例がある場合、基本的には厳しい判断による判例によらざるを得ず、それがかえって政務活動費という議員の調査研究その他の活動を補助する経費の支出の足かせとなってしまうのではないか問題も生じる恐れがある。

 地方自治法100条16項においては、議長の政務活動費に対する使途の透明性確保のための努力義務を規定していることから、実質は議会事務局による透明性確保のためのチェックは想定されているとはいえ、支出した議員と議会事務局との政務活動費の支出に関し見解が異なる場合は、支出した議員が支出の責任を有する中で明らかに違法な支出以外については、議員の見解に基づく支出を認めるべきものである。

 

議員の広報活動: 政務活動費の広報費に対する意義と課題

 次に政務活動費の使途について裁判上その支出が認められていながらも、オンブズマン等から、議員の倫理的観点から支出が適当でないといわれる経費の主なものとして広報費があげられる。

 政務活動費による広報費の支出は、本来政務活動費で支出すべきでない議員の選挙活動や後援会活動、政党活動などの広報活動と混同されることが想定されることから、政務活動費の使途基準として規定すべきものではないと批判される向きがあり、議員の倫理(政治倫理)という観点からも政務活動費の広報費としての支出に疑問が投げかけられている。

 しかし、私は政務活動費においての広報費は現在以上にもっと支出し、議員及び議会活動へ活用すべきであると考える。なぜなら、議会又は議員に対する様々な議会に対するアンケート調査結果をみれば明らかであるように、議会、議員の住民に対する情報提供が不足していることは間違いない事実である。

 この問題には様々な問題が絡んでいるが、議員又は会派の広報活動の不足があげられる。その際の1つのネックとなるのが広報紙の発行経費である。全住民の代表であるという議員の性格からいえば、全戸配布が原則である中、それを例えば毎月広報費を発行するとした場合、どれだけの経費が必要となるだろうか。

 議員、会派の活動である開会中における本会議や委員会における活動は議員活動の中において一部であり、その多くは閉会中における議員活動、会派活動であり、その閉会中の当該活動が見えにくいことから住民の不信を招いている部分は大きい。

 確かに議員、会派によっては閉会中の活動に差異があることから議員又は会派としての広報紙の発行に消極的な面があることがあるが、議員又は会派の活動等の情報をきちんと住民に伝えてこその議会・議員活動ではないか。議会、議員としての活動を明らかにしてもなお、住民の不信が起こるのであれば、さらにその原因探り、解決策を考えればよい。

 なお、広報紙の発行経費が一定程度政務活動費で保証できないとなると、広報誌を発行できる経済的余裕のある議員が有利となり、住民に議員又は会派の活動を十分に伝えることが難しくなる恐れがあることに留意すべきである。

 

政務活動費の透明性と活用: 住民への説明責任とまちづくりへの期待

 住民に対しきちんと議員、会派としての活動を報告することは、住民の議会議員への正しい認識、評価への第一歩であると考える。

 また、議員又は会派は政務活動費を支出しておこなった活動はできるだけ明らかにすべきである。市区議会においては視察報告書や領収書の開示をホームページなどで進めている議会が50%以上となっているが、住民の税金を使用する政務活動費であるからこそ、個人情報に該当する部分を除き、きちんとその活動の実態も住民に知らしめる必要があるといえる。

 政務活動は必ず議員・議会活動に直ちに直結しなければならないものではないが、長い目で見れば議員の資質を向上させ、行政に対する議員、議会としての監視機能、政策立案機能を向上することにつながるものである。

 ぜひ住民の理解を得ながら、十分な政務活動費を確保し、住民の福祉向上、よりよいまちづくりに活かしてもらいたい。