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2月 26, 2024

政務活動費関係書類のDX化と書式について②


 今回も、政務活動費関連書類のDX化を進める上で課題となることについて、以下の質問を頂きましたので、これに対して、回答したいと思います。


 私は、どこに文字が書いてあるかとか、必要な事項を様式でまとめて縛るよりも、どんな事項を記載すれば十分かを条例には書き込むべきかと考えています。

 それは、紙であれば確認しやすい様式でも、webなどディスプレイを通して見るものには必ずしも現行の様式がうまくハマるとは限りません。

 各時代ごとにデバイス(紙も含む)を問わず見やすい形を提供する為には、どのような形で条例ないしは規則を書くべきでしょうか?

Circular Image

エイブルコンピュータ
議会BPRアドバイザ 五十川員申


裁判所関係の書類について

 政務活動費関係の提出書類について規定する条例は、どのような規定にしていくことが望ましいか、私の意見を述べたいと思います。

 前回、弁護士が取り扱う裁判所関係書類においては、裁判所が定型のひな型を準備していますが、これに拘束されるものではないこと、しかしながら、実際には定型のひな型を利用した方が案件をスムーズに処理できることから、定型のひな型の書式を利用することが多いということを説明しました。

 このように定型の書式を使っても、使わなくても良いのは、裁判関係書類においては、書式が法律で定められているものではなく、記載しなければならない要件や項目が抽象的な文言として規定されているからです。

 例えば、民事裁判を提起する時に裁判所に提出する「訴状」であれば、民事訴訟法134条2項に、「①当事者及び法定代理人、②請求の趣旨及び原因」を記載すべきと規定されています。

 上記のような条文の定め方であれば、非常に自由度が大きく、本来、多種多様な形式や書式で提出されてもおかしくないはずですが、実際には、ほとんどの訴状が同じような形式で作成されています。


法律や条例の規定の抽象度について

 一方、裁判所関係の書類ではありませんが、婚姻届や離婚届については、法律で、厳格に書式が決められていますから、この書式に則って、書類を提出しなければなりません。

 これは、非常に大量で定型的な処理が必要で、確実に漏れなく記載がなされなければならないものについては、厳格に書式が定められる必要があるためです。

 法律や条例の条文の作成方法は、どのような業務なのか、どのような目的で作成するのかなどによって、どの程度、厳格に規定するのか、緩やかに規定するのかが変わってきます。

 法律や条例で、厳格に規定すればするほど、書類を受け取る側としては定型処理が可能となりますが、時代な状況の変化によって、書式を変更しなければならない状況になった場合、法律や条例を改正しなければならないため、非常に硬直的な運用になってしまいます。


政務活動費に関する条例の規定方法について

 私の意見としては、政務活動費関係の規定については、比較的、多くの書類を整理して処理する必要がありますし、政務活動費が適正になされていることを確認するためにも、一定程度は具体的なものとしておく必要性があると思います。

 しかしながら、婚姻届や離婚届のように、完全に書面としての形式を定めてしまうと、固定化してしまって柔軟な対応が出来なくなってしまいます。

 特に、IT化が進んでいる現代においては、書面での提出を必須とするのは弊害が生じることになりますから、書面での提出を前提とするような規定はすべきではないと思います。

 仮に、一定の書式を定めるとしても、その書式に類似するものであれば許容するような規定とするのが良いと思います。

 また、条例で細かい書式まで規定してしまうと、これを改正するには議会での決議が必要となりますから、条例では事務的な細かいことまでは規定しない方が望ましいと思います。

 柔軟に対応できるようにすることと、政務活動費の適正化が甘くなることは別の話です。柔軟に対応できるような条例の規定として、IT化やDX化が進むことにより、議会事務局がチェックしやすくなったり、一般市民も理解しやすい形式で公開されたりすることによって、政務活動費の支出が適正になされるようにしていくことも可能と思います。

 今後、政務活動費の事務負担を軽減し、政務活動費の適正化を進めていく上でも、IT化やDX化は重要であり、この要請に対応しやすくなるような条例の規定とするのが望ましいと考えています。