今回は、政務活動費関連書類のDX化を進める上での課題ということで、以下の質問を頂きましたので、これに対して、回答したいと思います。
政務活動費関連書類のDXを大きく阻むものの一つとして各議会で定める様式が問題となります。
森岡弁護士の活躍される弁護士業務のなかで必要となる書類は同じように様式を定めて運用されていますか?
エイブルコンピュータ
議会BPRアドバイザ
五十川員申
弁護士業界における書類について
私達弁護士の日常業務は、法律関係文書を作成することですが、最も多いのが裁判所に提出する書類を作成することです。
裁判所に提出する書類は非常に多岐にわたっていますが、通常の民事訴訟であれば、訴状、答弁書、準備書面、証拠説明書、控訴状、控訴理由書などがあります。
その他、通常の民事訴訟以外では、強制執行申立書、破産申立書、労働審判申立書などなど、申し立てる手続きに応じて、いろいろなものがあります。
これらの裁判手続きで使用される書類の記載事項は、当然ながら、法律で規定されています。
例えば、民事裁判を提起する時に裁判所に提出する「訴状」であれば、民事訴訟法134条2項に、「①当事者及び法定代理人、②請求の趣旨及び原因」を記載しなければならないと規定されています。
上記のように抽象的な規定となっていることから、どのような形式であったとしても、上記のこと(①当事者及び法定代理人、②請求の趣旨及び原因)が記載されていれば適法な訴状となります(もっとも、「請求の原因」というものは、別途、民法等で決められている要件があり、請求する内容によって記載内容が違ってきます)。
しかしながら、訴状は、弁護士にとっては、日常的に作成する書類ですから、一定の定型の書式に従って作成した方が合理的ですし、裁判所としても、上記必要事項が記載されているかどうかを確認しやすいということから、多くの弁護士が同じような書式を使っています。
裁判所が公開しているひな型
実は、裁判所のホームページを見ると、非常に多くの裁判書類のひな型が準備されており、とても便利です。
弁護士でも、普段、ほとんどやらないような案件を担当するときは、裁判所のホームページから書式をダウンロードして使用することもあります。
裁判所の方で書式を公開し、充実させているのですが、前述のとおり、この内容で裁判所に申立をしなければならないというものではなく、裁判所が指定する様式に従っていなくても、法律上の要件を満たしていれば、裁判所は書類を受け付けます。
このように、弁護士が関わる訴訟の関係では、前述の「訴状」の例のように、法律の条文に規定されている内容が抽象的な内容が多いので、本来であれば、法律の要件さえ満たしていれば、各自で自由にバラバラな書式で提出しても良いのですが、実際には、弁護士にとっても、裁判所にとっても、定型のひな型を利用した方が案件処理を進めやすいので、多くの人が同じような書式で作成しています。
裁判手続きのIT化・DX化について
今後、裁判所や司法の業界においても、IT化やDX化が進んでいくことになりますので、従来の紙での提出を前提としていれば分かりやすかったものも、データでの処理になると不都合が生じるということも起きてくると思います。
そうすると、裁判所関係の書式やひな型も変化していく必要が生じてきます。
もし、裁判書類について、法律で細かいところまで決められていれば、IT化やDX化にあたって変更が必要な事態が生じた場合に、法律を変えなければならないので、非常に対応が遅くなってしまうことになります。
しかしながら、裁判関係書類については、そもそも、法律自体が非常に抽象的な規定となっているため、実は、時代の変化に合わせて、柔軟に、合理的で効率的な方法に変化させやすい状態となっているため、今後、IT化やDX化に対応するために変化していくことも十分に考えられると思います。
実際にこれまで多くの議会と情報交換させて頂きましたが、様式を条例で定めているところ、規則で定めてるところ、その両方で定めず、マニュアルや手引きで定めているところと様々でした。
また、情報交換の中で、ある議会では様式自体に参考様式と書いてあるところもがあり今回の森岡弁護士のおっしゃってるような考え方で進んでいる議会もありました。DXを進めていく中で、既存の様式や働き方に囚われすぎるとシステム導入コストが上がります、セムカン導入を検討される中で様式の定め方についても議論してみてはどうでしょうか?
エイブルコンピュータ
議会BPRアドバイザ
五十川員申