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8月 30, 2023

「政務活動費」の舞台裏:弁護士の視点から見る行政案件の特異性

自己紹介と経歴

 これから、政務活動費に関する記事を執筆することとなりましたが、まず、第1回目では、私の自己紹介をさせて頂きたいと思います。
 私は、大阪大学在学中の平成13年に司法試験に合格し、平成16年に弁護士登録をしました。現在は、石川県金沢市の弁護士法人兼六法律事務所にて弁護士をしております。
 弁護士法人兼六法律事務所は事務所設立から30年以上の歴史があります。石川県金沢市と白山市に事務所を構えており、私は、金沢事務所の所長を務めております。弁護士数は8名であり(令和5年8月時点)、地方都市の法律事務所としては、規模は大きい方になります。

弁護士事務所の活動と特徴

 当事務所では、企業法務を中心としつつ、交通事故、相続、離婚問題など、幅広い分野の案件について対応しています。
 弁護士は、それぞれ得意分野をもっており、相談やご依頼があった場合には、その分野が得意な弁護士が案件を担当することとしています。また、弁護士は案件を担当する中で難しい問題に直面したり、判断に迷うこともありますが、そのような場合には、当事務所の弁護士全員が参加する検討会にて協議し、弁護士全員でより良い解決策を考えるようにしています。

経験と実績の紹介

 この記事を執筆するにあたって、当事務所の相談件数、依頼件数を調べたところ、この20年間で当事務所でお受けした相談件数は約2万件、実際に依頼を受けて交渉や裁判を担当した案件は約1万件でした。ほとんどが石川県の依頼者の案件ですから、このように振り返って考えると、多くの方々のご相談に応じてきたのだなと思います。
 最近でも、当事務所では、毎月100件程度のご相談をお受けし、40~50件程度の交渉や裁判のご依頼を受けています。
 私自身は弁護士になってから約20年となります。これまで多種多様な案件に関わって経験を積んできましたが、現在は企業法務を得意分野として、顧問会社などからの多様な相談に対応しています。
 そして、これが、この記事執筆のきっかけとなったと思いますが、私は、県や市などの行政側での相談や依頼を受けることが多くありますので、日常的に、行政の職員の方々とお話する機会が多くあります。
 弁護士として、行政の方々のご相談に応じる他、私は、現在、石川県収用委員を務めておりますし、これまで、行政不服審査員や訟務専門員などの行政の役職に多く就いています。
 行政側が訴えられた場合の訴訟代理人を多数経験しており、その中で、政務活動費返還請求訴訟の件についても訴訟代理人を務めています。私が事務所を構えている石川県では、毎年、市民オンブズマンが問題視する政務活動費の支出について、監査請求がなされ、その後、政務活動費返還請求訴訟が提起されています。
 弁護士は、どちらかというと、市民の側に立って、行政を訴える方が多いので、私のような行政側として対応する弁護士は珍しい方だと思います。

異なる案件への対応と配慮

 個人の案件、企業の案件、行政の案件では、それぞれ、弁護士として対応する時に気をつけることが違うところがあります。
 どのような案件であったとしても、法律と事実に基づいて、出来る限り、依頼者の要望を叶えることを目指しますが、例えば、個人の案件であれば金銭的な問題だけでなく、夫婦や親子の問題も関係してきますし、その方の人生がどのようになっていくかについて重要な岐路に関わることが多く、人間関係に配慮する必要性が強くなります。また、個人的な感情が前面に出ることが多くありますので、そのような感情を受けとめつつ、冷静で合理的な対応をしていく必要があります。
 企業の場合には、大企業と中小企業とで変わってきますし、社長が、会社において何を大事にするかということによっても対応が変わってきます。
 企業も、行政も、同じく組織として動いており、トップがあり、その組織に所属して働く方々がおられるという点では同じです。
 しかしながら、同じ組織の問題であったとしても、行政の案件と企業の案件とでは大きく異なるところがあると思っています。

行政案件における重要なポイント

 私が、行政の案件に関わるときに意識していることに、次のようなことがあります。
 行政は税金によって運営されているものですから、行政が何らかの支払いをするということは、納税者の方から納めて頂いた大切な税金を使うということになりますので、不当な支払い要求は拒否しなければなりませんし、回収しなければならないものは適切に回収しなければならないことも重要だと思っています。
 ただ、行政は、民間企業と違って利益を追求しているものではなく、利益が出るかどうかという視点ではなく、法律上、適正になされているかどうかということをより重視する必要があると考えています。
 また、行政に訴訟提起されたような場合には、特に地方であれば、すぐにマスコミ報道をされることになります。
 私の経験では、行政が訴えられている裁判では、記事にならないような案件であったとしても、傍聴席には新聞記者が座っています。訴え提起をされた場合や判決が言い渡された時などは、行政側が勝訴した場合にも記事になります。ましてや、行政側が敗訴した場合には新聞に大きく取り上げられ、テレビでも報道されてしまうことも多いです。
 行政が裁判で訴えられた場合には、社会の注目を集めることになりますから、そのようなことにも配慮して対応する必要があると思います。

経験と実績の紹介

 特に、政務活動費返還請求訴訟の案件であれば、訴訟での被告となって訴えられているのは自治体ですが、実際に問題とされているのは地方議会の議員の方々となりますので、通常の行政訴訟よりも気を遣う側面があります。
 これから、具体的なことについては、今後の連載の中で記載していきたいと思います。
 私は、政務活動費を専門的に取り扱っている弁護士ではありませんが、これまで、政務活動費返還請求訴訟を十数件扱ってきましたし、全ての案件で、地方裁判所、高等裁判所、最高裁判所での審理がなされていますので、一定程度の経験があると思っています。
 また、弁護士として様々な紛争案件を多く取り扱っており、特に、行政側の案件を多く手がけているという経験を有していることから、少しは、皆様のお役に立てることをお伝えできるのではないかと思っています。
 少しでも、政務活動費を扱っておられる方々のお役に立てる記事を書けるよう、努力をしたいと思います。