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コラム
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10月 21, 2024

ユーザーインタビューvol.2 柏崎市議会 柄沢議長

セムカンSaaS実証実験が開始されたばかりの柏崎市議会を訪問し、柄沢議長にインタビューする機会を得ました。今回のインタビューでは、議会としての政務活動費の管理効率化に向けた取り組みとしてセムカン実証実験に参加した背景や目的についてお話を伺いました。(敬称略)

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インタビュワー
中林

01

政務活動費管理の効率化は必須

――初めて柏崎市の新庁舎を訪れた時の第一印象として、明るくモダンな雰囲気が素敵だなと思ったのと、もう一点、柏崎市の規模感からすると意外とコンパクトな庁舎だなとも感じました。 

柄沢議長(以下、柄沢)実は、当初の新庁舎の構想と比べると、建物の規模自体は三割ほど小さくなりました。行財政改革の中で、職員の人数も減少する見込みだったため、最終的には約700人収容できる規模で設計されました。将来の人口減少を見越しての決定です。 

柏崎市の人口は過去10年間で1万人以上減少しています。そのため、職員の人数も縮小せざるを得ない状況です。一方で、柏崎市としての仕事量がそれに比例して減るわけではなく、職員数の減少に伴い職員一人当たりの業務は増えます。事務の効率化が大変重要になります。 

――事務効率化の観点から、政務活動費の管理についても同様にとらえるべきでしょうか。具体的な課題とともに教えていただけますか 

柄沢政務活動費管理の効率化は当然必須だと考えています。 

いくつか例を挙げると、我が議会では、大きな会派では会計担当者が一人で事務負担を抱えているという現状があります。会派で視察や研修に行った際には、会計担当になった議員が領収書のスキャンやコピー、書類の取りまとめなどに非常に多くの時間を割いていますし、また、会派の政務活動費予算の使用状況や残り予算を確認したくなったら、都度会計担当者に聞いてしまいます。聞く側は一人ですが、聞かれる側は人数分対応しなければならないので、やはり大きな負担になっているのではないかと思います。 

他にも、領収書記載事項を今はエクセルファイルに入力しているのですが、そのファイルをメールに添付して送るのか、紙に出力して送るのか、会派によって対応がバラバラで、事務局側にも余分な負担がかかっていると感じています。

柄沢また、事務の効率化とは違う観点になりますが、昨今頻発している災害を考えても、クラウド化のメリットは大きいと考えています。

ソコンが壊れてドライブの中に入っているデータが失われてしまったら終わりという事態は避けなければなりません。クラウド上にデータが格納されていることで、災害等の非常時でも情報が守られ、業務の継続性が確保されます。また平時においてもパソコンの具合や紛失時でもデータ保護されることは大きな利点です。 

02

実証実験に至るまでの経緯

――少し遡りますが、セムカンSaaSに興味を持っていただいたきっかけはどのようなものだったでしょう 

柄沢セムカンSaaSの紹介パンフレットに興味を持った職員から、セムカンSaaS導入を検討してはどうかと私へ相談がありました。

務局職員の業務効率が上がって負担も減るのであればいいんじゃないかと二つ返事でOK出しました。そこからいろいろと調査をしてみると、政務活動費に特化したシステムが他に見当たらないし、令和7年度まで無償で利用できる期間になっているということから、実証実験参加を検討してみようということになりました。 

――まずは知ることからということで、令和6年2月に全議員参加でセムカン体験会を実施しました。 

柄沢やはり、理解を深めるには自分で触ってみるというのが一番だと思います

ITに慣れている人、使いこなしている人がいる一方で、エクセルのフォームに入力するというだけでも難しく感じる人もいる。スキルの差は大きいわけです。でもセムカンのようにブラウザ画面の決められたフォームに入れていくだけなら全員できるので、体験会ではそのあたりをダイレクトに体感してもらえたかなと思います。 

体験会に参加した私自身の感想としても、会派の会計責任者の負担が大きく減るなと実感したので、まず議員自身が直接経験してみることはとても重要だと思います。 

――会派内で、各々の議員が政務活動費をどのように使っているのか、これまで情報共有どのようにされてきたですか? 

柄沢実は、締めてみないとお互いよく分からないです。議長に対しては報告がなされるので私はまだ分かるですが、会派内お互いに何に、いくら使っているのか最終的な報告書が出るまで分からないという状況にあります。そこがセムカンだとリアルタイムに分かる。支払いが発生してから何ヶ月も経ってから処理するのではなく、各議員がその都度確認依頼を事務局に出すだけで、途中状況が分からないという課題はほぼ解消されるじゃないかと思います。 

――締め作業の位置づけについて、従来の方式とセムカン方式の違いについてはどのように思われますか? 

柄沢締め作業の目的は、会派内や議会全体での支出状況の確認・情報共有ということの他に、事務作業が4月、5月に集中しないようにすることや、支出がより的確に処理されるようにしようということが挙げられると思います。

柏崎市議会では中間締めを行っていますが、先ほどの話の流れで行くと、半年で締めてみないと会派内の使用状況が正確につかめないというのはやはり時間がかかりすぎているのではないかという感覚があります。

また、情報把握という観点だけでなく、締め作業は政務活動費の使途として正しいかどうか、事務局に確認を取る機会でもあるので、それが半年に1回だけというのは少し効率が悪い。領収書の束をまとめて持っていって、これは使える、これは使えないとやるのは、議員・事務局双方に負担が生じているとも言えます。 

 支出が発生したらセムカンに入力するという「クセづけ」ができれば、記憶が新しいうちに事務局とやり取りして、適正な使途であるかどうかすぐに分かることになります。あとは、年度末に、政務活動費の予算に応じて充当するか除外するかを選択するだけの作業になるので、ずいぶん管理が効率化されると予想しています。 

戸田市議会 令和4年度みらいの会 政務活動費サマリー

――まだプロトタイプ版ですが、戸田市議会の情報公開ページを見ていただきました。このようなセムカンによる情報公開の仕組みついてどのように思われますか? 

柄沢政務活動費は市民の皆様からお預かりしたお金なので、情報公開は議員にとって当たり前のことです。領収書の公開までやるべきだと思っていますし、市民にとっても重要であることは間違いない。その意味において、戸田市議会のセムカンによる情報公開ページはよくできているなと思いました。セムカンを利用することによって、情報公開ページが自動的に作られるというのは、業務効率の観点から見てもとてもいいと思いますね。 

市民の皆様にとっても、PDFを一つずつ開いていく今の公開方法より、整理されてビジュアル的にも見やすいWebページの方が、議員がどのように政務活動費を使っているのか情報にアクセスしていただきやすいと思います。ともすると疑念を招きやすい視察についても、議員が何をどのように勉強してきたのか、報告書も見やすくなるので、開かれた議会であるということをしっかりと見ていただけるんじゃないかと思います。 

03

議会改革を粘り強く進めていきたい

――議会改革を推進するにあたって、ITは欠かせない要素です。一方で、どの議会関係者と話しても、ITに苦手意識を持つ議員をどのように巻き込んでいくかが課題になっています。貴議会ではどのように乗り越えて行こうとされていますか? 

柄沢柏崎市議会では、平成26(2014)年に議会基本条例を定め、パソコンを議場に持ち込めるように平成28(2016)年にルールを決めました。さらに、令和2(2020)年にはiPadを導入し、一気に議会のペーパーレス化を行いました。前期くらいまでは、議案書を紙でも配布してくれという議員はいらっしゃいましたが、今期に入ってからは、それも全く出なくなりました。会派ごとに多少温度差もありましたが、今期に入るタイミングで、ひとつ大きな山を乗り越えたかなという印象です。

柄沢柏崎市議会では今お話ししてきたような課題感を持ってセムカンSaaSの実証実験に臨んでいます。

一方で、の報告書や申請などまだ紙書類でやり取りしているものがまだたくさんあります。将来的にはこれらもセムカンの中でオンライン化できるといいなと思っているのでこのような課題を、実証実験を通じて互いに一つずつ乗り越えていきたいなと思っています。

柄沢議長へのインタビューを通じて、柏崎市議会が進めている議会改革の一貫した取り組みの流れの中で、政務活動費管理のシステム化が位置づけられており、議員側だけでなく事務局側の業務効率の向上をセムカンSaaSで実現したいという期待を強く感じました。 

インタビューの最後にいただいた、「先輩議員が10年以上前から進めてきた議会改革を、私たちが止めるわけにはいきませんからね」という柄沢議長のお言葉が強く印象に残りました。

お忙しい中、ご対応いただいた柄沢議長様に心より感謝申し上げます。